今回の記事では、ゼロからTOEIC満点を取るまでにどんな学習が必要か(最も効率が良いか)を解説します。私が普段から英語指導で常に意識している内容になります。また、塾に通っているか、独学かにかかわらず、英語力向上を目指すうえで全員が知っているべき内容だと思います。
私自身いわゆる「純ジャパ」で、中1でゼロから英語学習を始めて24歳でTOEIC990点満点を取得しています。また、東大言語学科卒で、第二言語習得論や認知心理学などの最新の知見も踏まえて普段から英語の指導をしております。
なので、最も効率の良い英語学習に関しては、かなり詳しいと自負しています。
なお、今回の記事は「英語力を伸ばす」という目的がメインです。TOEIC対策に特化した勉強法については、別途記事にまとめます。
発音記号の学習、発音の習得
英語学習を効率化させるうえで、発音の学習は極めて重要です。
発音をマスターすることで、英語に対するモチベーションが格段に上がります。発音をマスターすれば、単語の音を覚えればスペルはほとんど予想できますから、単語を覚えるスピードも格段に上がります。
よほど「直近の試験に追われている」とかでない限り、まずは「発音にこだわる」ことは極めて重要です。リスニング力の向上にもつながります。
とはいえ、私もすぐに思い通りの発音ができたわけではありません。thrillやcurtainなど、なかなか上手に発音できなくて何百回も発音練習をした記憶があります。
英語発音のおすすめ参考書
「英語耳」という本を一冊持っておくと、発音、発音記号について知っておくべきことがだいたいまとまっているのでおすすめです。

文法学習
近年、日本の英語教育では、「文法学習なんて全く不要」という極端な意見を持つ人までいます。
たしかに、いつまでも細かい文法を追い求めて永遠に文法の学習をするのはよくありません。また、大学入学共通テストやTOEICなどでは、文法を直接問うような問題はなくなっています。
ですが、正確に文章を読むためには、最低限の文法の力は必須です。そしてそれは、「最低限」という言葉でイメージされるよりは深い内容であると思います。
具体的に、正確に文章を読むために必要な文法としては、次のような内容が分かっている必要があります。
- 助動詞の意味・用法(時制・相含む)
- 品詞の区別(名詞・動詞・形容詞・副詞・接続詞・前置詞)
- 関係詞・接続詞の用法
- 5文型
特に、品詞および関係詞については明示的な学習が求められます。(助動詞の意味等は、たくさんの英文に触れることで自然と学べる部分も大いにあります)
品詞が分かっていないと、英語学習のあらゆる側面で損をしますので、絶対に理解しましょう。
文法学習に対して懐疑的な人の意見として、「たくさん英語に触れれば自然と学べるのでは?」というものがあります。極端な話、ネイティブスピーカーは全員、文法を自然に身につけています。
ですが、中学生以上で第二外国語として英語を習得しようとする場合には、文法を明示的に学習したほうが効率的であるということが研究で明らかになっています。文法をしっかり勉強した方が英語の習得が速いということです。
一方、クジラ構文に代表されるような、細かすぎる知識を入れる必要はありません。上に挙げたような文法の力を「英語の幹」とすると、クジラ構文のようなものはほんの小さな枝葉です。入試はおろか、今後の英語人生で二度と出会わない可能性もあります。そのようなものに勉強時間を割くのはもったいないです。
「英語の幹を太くする」ことを心がけて英文法の大事な部分を繰り返し勉強しましょう。
TOEICで点を取ることや、実用的な英語を身につけることを目指す場合、珍しい構文を理解できる力よりも、共通テストレベルの英文を速く正確に理解できる力のほうがよほど重要です。
文法学習のおすすめ参考書
中学内容が分かっていない場合には、参考書を初めから終わりまでしっかりと読んで理解する必要があります。
高校内容のより細かい文法は、参考書を読むというよりは、問題を解いていたりして気になるたびにその単元を読む、という使い方が良いと思います。
中学内容(通読用)
「中学英語をもう一度ひとつひとつ分かりやすく」「大岩のいちばんはじめの英文法」
高校内容(辞書のように使う)
「Evergreen」「一億人の英文法」
単語・熟語
英語に限らず、言語学習の基本ルートは
発音→文法→単語・熟語表現
と思って差し支えないです。東大の言語学科の先輩から、「言語は一に文法、二に単語。三、四が単語で五に単語」という言い伝えを聞いたこともあります。発音や文法は、「いったんここで一通りの学習は終わり」と言えるタイミングが来ますが、単語や表現の学習は永遠に続きます。
単語は文脈で覚えるべき?
「単語をしっかりと使えるようにするためには、1対1の訳だけじゃなくて例文ごと覚えるべき」
という意見を聞いたことはありますでしょうか。これは、間違いではありませんが、私としては例文を覚えることまでは推奨していません(使い方を学ぶために例文を読むことは大事です)。理由はいくつかあります。
理由1:時間がかかりすぎる
たしかに、例文を覚えないよりは覚えた方が学びは多いでしょう。ただし、かかる時間に対する効率も考慮すべきです。単語帳1冊は1000単語以上あります。例文をすべて覚えようとすると、途中で挫折することになってしまいがちです。
理由2:長文の方が良質な例文である
たくさん英文を読んでいたら、その単語にもいつかは出会います。そして、そうした出会い方の方が、コンテクスト(文脈)を豊富に含むので、単語帳内のたった一文の例文で見るよりも、その単語の語感を感じ取りやすいです。
単語帳を例文まで含めて時間をかけて完璧にするよりは、単語帳はさらっと終わらせて、浮いた時間で文章をたくさん読む方が効率は良いと思われます。
単語の覚え方
まずは一語一訳
まずは一語一訳でOK。ただし、後々の英文で出会うたびに、その単語のイメージを修正(膨らませる、減らす、ずらす)していく意識を持つこと。
コアミーニングを考える
たとえば、bearという単語を学習することを考えてみましょう。単語帳には、(「熊」は別の単語にカウントするとして)、
- 運ぶ
- (費用・責任などを)負担する
- 耐える
- (恨み・愛情を)いだく
- (女性が子を)産む
などの意味が書かれています。これらをすべて覚えるのは大変ですし、かといって一つだけ選んで覚えるのもなんだかなぁ…という感じです。そういうときは、なるべく多くの意味に共通するイメージを覚えるようにするのが効果的です。
bearの場合には、重いものを両腕で持っているイメージを持ってみましょう。
品詞は絶対に覚える
性質を表す言葉の場合には、形容詞か副詞か。
動詞の場合には、自動詞なのか他動詞なのか。
品詞の理解がはっきりしていないと、複雑な文を読むときに文構造の理解ができなくなります。また、解釈が1つに絞り切れずに、文章の意味がぼやけてしまいます。特に、受験やTOEIC、英検などで点を取らなければいけない人の場合には、これは点数を失う大きな要因となってしまいます。
おすすめの単語帳
実は、特におすすめというものはなく、よく売れているものであれば何でも良いです。レベルに合ったものを買いましょう。単語帳をぱらぱらとめくってみて、2割~5割くらい知っている単語が入っているのが、適切なレベルです。
単語帳はどれをやるかよりも、とにかく1冊ちゃんとやりきることが大事です。そういう意味では、単語帳のデザインが気に入ることも重要だと思います。
ついでに、長文などで出会う単語・表現についてですが、よほど特殊な専門用語でない限りは、出会った単語はすべて覚えることを意識しましょう。
長文読解(+多聴)
文法・単語をある程度習得したら、たくさん文章を読んでいきます。
そのときに意識してほしいのは、
精読で器を大きくし、多読でその器を満たす
という感覚です。
「英語ができる状態」というのを、「大きな器が、水で満たされた状態」だと思ってみてください。器が小さくてもいけませんし、水を注がずに器だけ立派にしても英語は使えません。
具体的にどういうことか、以下にご説明します。
精読
精読というのは、一文一文を完璧に理解することを目指す読み方です。
必要に応じて辞書や文法書を参照しながらじっくり読みます。1~2ページの長文に、数十分~1時間かかることもあります。
すでに習った文法事項であっても、接続詞や関係詞の実際の用例に慣れていないと、正しく解釈できない文はたくさん出てきます。そうした英文を正しく読めるようになるための訓練が精読です。
日本の学校英語教育では、従来精読ばかりを行ってきました。そのため、日本人の英語力が伸び悩む要因として精読が槍玉にあげられることも少なくありません。
しかし、問題なのは精読そのものではなく、精読「だけ」に依存する学習法です。精読ばかりで多読をしないから、頭でっかちで文法だけにやたら詳しいけど英語は全く使えない人になってしまいます。
しかし、言語習得のある段階において、精読は一定量は不可欠な学習手段であることは確かです。正確に理解できる英文の幅を広げておかないと、英文を読んでも一つ一つの理解度が低いために、学習効率が低いままで時間ばかり費やしてしまうことになります。
「精読も多読も必要である」と覚えておきましょう。
多読
多読というのは、「おおまかな理解度でかまわないので、内容を楽しむことを意識して、どんどんたくさんの英文を読む」ことです。
辞書や文法書は参照してもかまいませんが、それよりはとにかくスピード重視でたくさん読むことが推奨されます。
人間の脳というのは、無意識下でかなりの量の情報処理・記憶の整理をしています。なので、「とにかく大量のインプットを与えることで、無意識脳に勝手に学習させよう」というのが多読の考え方です。
これは非常に大事な考え方で、多読はうまくいった場合には極めて学習効果が高いというデータがたくさん出ています。
ただ、「うまくいった場合には」というところがポイントです。
学習者自身が自分で本を選ぶと、たいていの場合は難しすぎる本を選んでしまい、失敗してしまいます。難易度のイメージとしては、英検準1級に合格できる人が、英検3~2級レベルの文章をたくさん読むというくらいです。とにかく、簡単な英文をたくさん読むということが大事です。
理想的な多読を実践しようとすると、レベル設定・モチベーション・金銭面などなど、さまざまなハードルが立ちはだかります。
多読に関しては、この記事では語り切れないので、また後日別途記事でご紹介します。
多聴
多聴もとても学習効果の高い勉強法となります。リスニング力だけではなく、あらゆる英語力が総合的に身につきます。
やり方は簡単で、理解できるレベルの面白いコンテンツを英語でたくさん聞くというものです。ポッドキャストなどでもいいですが、アニメや映画、ドラマなどの方が、映像の補助があるので理解しやすいです。
英語音声・英語字幕(または字幕なし)が好ましいです。英語音声・日本語字幕でも無意味ではありませんが、効果は劣ります。近年は、Netflixの配信やYoutube動画に英語字幕を付けられるものが多く、かなり多聴がやりやすい環境になっています。
英語勉強用で考えると、配信サービスの中ではディズニー+がおすすめです。Netflixでも大丈夫ですが、日本のアニメで英語音声・英語字幕にできる作品はさほど多くなく、アメリカのドラマなどから探すことになります。
聞き流しはNGです。あまり学習効果はありません。理解できるものを、意識的に聞いてください。
英会話
仮に大学受験やTOEICのためにスピーキングが必要なかったとしても、英会話は効果的な勉強方法です。なぜなら、言語をアウトプットする場面があると、脳がその言語を習得する必要性があると認識するからです。
英語の勉強総時間のうち、少なくとも1割~2割はアウトプットに充てるのが良いとされています。
かつては、(特に田舎の方では)ネイティブスピーカーを探すのは難しく、英会話は誰にでもできるわけではありませんでした。でも、今は違います。
以下に、いくつかおすすめの英会話練習法をご紹介します。
独り言英語
独り言英語は、普段生活していて、「目に見えるものをひたすら英語の文でつぶやく」という勉強法です。あまり勉強してる感のない学習法ですが、かなり効果は高いと思っています。
日本にいながらにして高い英語力を獲得したYoutuberの方々も、口をそろえて「独り言英語が効果的」とおっしゃっています。
初めのころは凝った英文は言えないと思うので、めちゃくちゃ簡単な文で大丈夫です。 A man is walking.とか、He has a bag.とか、それくらいの簡単な文でOKです。ただし、単語ではなく、文を作りましょう。駅のような、人が多いところだと、題材がいっぱい目に入るのでやりやすいと思います。
なるべくいろいろな構文が使えると望ましいですが、あまり気にせずとにかくたくさん文を作ると良いです。
他人に話すわけではないので、失敗を恐れる必要がないのが大きなメリットです。比較的英語学習の初期段階から始めることができる学習法です。
ChatGPTと英会話
最近ですと、これがイチオシです。
場面設定をしてロールプレイングをしたり、雑談をしたり、何でもできます。話したことを文字起こしして、自然な英語に直してもらうこともできます。また、人間相手ではないので、失敗を恐れなくてよいのも大きなメリットです。
月額3000円の課金が必要となりますが、英会話以外にも使えますので、その価値は十分にあると思っています。
オンライン英会話
個人的には、ChatGPTの方が優秀すぎるので、オンライン英会話は必要ないと思っています。
ロードマップ・学習時間配分
学習段階に応じて、以下の順番および時間配分で学習するのが良いと思われます。
学習初期(英検3級まで)
発音・文法(中学生内容)・単語
学習中期(英検2級まで)
長文(精読)…30%
長文(多読・多聴)…30%
単語・熟語…30%
英会話(独り言・ChatGPT)…10%
%は英語の勉強時間に占める割合の目安です。
学習後期(英検準1級取得後~)
長文(精読)…10%
長文(多読・多聴)…50%
単語・熟語…20%
英会話(独り言・ChatGPT)…10%
英語学習が進むにつれて、精読の割合を減らし、多読の割合を増やしていきます。「学習が進むにつれて、学習方法がネイティブスピーカーに近づいていく」ともいえるかもしれません。
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